若い日の思い出 2006北海道編 府中→新冠

皆様 お待たせしました。半年ぶりです。

こうしてブログを書くのがとても久しぶりで、ひそかに楽しみにしてくれていた皆様、お待たせして申し訳ありません。書こう書こうとは思っていたのです。ただ、残念なことに私の浅薄なコーヒーの知識が出し尽くされてしまい、時節に絡めるネタが無くなってしまったのでございます。

私が精神科医としての真面目な内容を書くのは不向きでしょう。そういうことは他の真面目な医師に聞いてください。

ということで、ここは私らしく、若かりし頃の私が競馬で28万円を当てた2006年6月4日から始まる物語を書こうと思います。長編にわたる自慢です。ご容赦ください。

 

2006年6月4日 夕刻

東京競馬場から自宅に帰る京王線の車内で私は震えていた。

馬券当てましたそばには医師後輩の女の子、なぜか私の両親。他は小汚い、といってしまっては失礼、ともに一日競馬場で戦って夢破れた多くの中年男性が乗車していた。「顔色悪いですよ」と後輩が言う。当然だった。ポケットの中の、昨日のメモを見るのが怖い。

その日競馬場に友人4人で行くつもりだったのに、運良く最上階の指定席が当選したのに、友人たちから次々とキャンセルされ、たまたま声をかけた後輩の女の子がそういう事情なら先輩のおごりで行きましょう、と「お情け」で参加してくれた。他に誘える人脈が尽き、破れかぶれで声をかけた私の両親が来ることになり、自分の両親と後輩の女の子が一日競馬場で緊張しながら過ごすという訳の分からない一日を無事終えた。こういう状況で小心者の私がまともに競馬を楽しめるはずがなく、当日の馬券は散々だった。

逆に前日の予想方法は冴えていた。安田記念に香港馬ブリッシュラックとジョイフルウィナーの2頭が参戦しており、迎え撃つ日本馬を倒すとしたら2頭とも3着以内の馬券圏内に入るだろう。1着から3着までの3頭のうち2頭は決まった。あとは近走成績が悪いものの昨年の安田記念の覇者アサクサデンエンは紐に加えておいた方が良い。混戦ではリピーターが来る。

そんな安易な発想の組み合わせで購入した3連複500円分が、28万円以上、研修医2年目の私の給与の2か月分以上に化けた。ポケットのメモを確認し、家に帰ってパソコンで的中を確認した私は、歓喜に酔いしれながらその夜に北海道ツーリングの本を購入した。間近に迫った夏休みは家で一週間寝込む予定だったが、憧れの地で相棒Vmax1200(写真)とともに一週間過ごせる旅費が、自分の貯金を使わずに!手に入ったのである。これは競馬の神様が私に与えてくれたご褒美だ。

(皆様にギャンブルを推奨しているわけではありません。競馬は適度に、余裕をもってお楽しみください。)

 

 

2006年7月9日

外洋の風が心地よく私の肌を撫でていた。左舷のデッキから目を凝らせば水平線のかなたに本土が見えている。生まれて初めての太平洋。前日深夜に私と相棒を積み茨城を出港した太平洋フェリーは、現在北海道苫小牧を目指して北上している。全てのバイク乗りが目指す、憧れの、そして試される大地、北海道である。

冒頭の長ったらしい前置きが無ければ単にお金持ちの自慢にしか聞こえないが、当時の私は貧乏学生上がりの青年で、フェリーも、北海道も、ロングツーリングも、何もかもが初体験だった。波立つ海を静かに力強く進むフェリーと、肌が受ける爽快な空気が、これから降り立つ北海道への期待を無限に高めていった。いよいよだ。

だが。

苫小牧に降り立った私を迎えたのは、快適を通り越していまだ冬の名残の寒気と、絶えず降りしきる雨だった。今日のうちに日高まで進んでキャンプを張るつもりだったが、私は不安に駆られた。準備は万端か?と、いきなり大地に試されている。ドン・キホーテで買った合羽は寒さまで防ぎきれず、こごえながらもなんとか日高のキャンプサイトに到着したが、「雨のため閉鎖」。往々にして予定とはこういうものだが、初日から自身の雨男ぶりを呪うことになるとは。

極力費用を抑えようとケチったことも裏目に出た。雨に打たれながら地図を確認すると、近くにユースホステルを発見。「予約していませんけれども」と伺うと、若い夫婦のオーナーが「どうぞ」と宿泊を快諾してくれた。

新冠ファンホースユースホステル。

何の下調べもせずに行きついた宿だったが、テンポイントの遺髪やジャングルポケットのダービーゼッケンなど、たくさんの競馬グッズが展示された競馬好きのオーナーが経営する宿だった。不思議な縁を感じてしまい、旅の初日にして泣きそうになる。まだ早い。感動はもっともっとあるはずだ。そう自分に言い聞かせて、ふかふかのベッドで就寝し1日目を終えた。眠りに吸い込まれつつ思う。初日なのにキャンプ場の土の上で寝ようなんて考えていた私は間抜けだったと。全てのバイク乗りが目指す憧れの地にたどり着いて、まだほんの初日である。色々あっても、全部楽しむくらいの余裕で行こう、と思い直した。

※後日談だが、新冠ファンホースユースホステルは2012年に役目を終え閉鎖された。貴重な競馬関連の品々が、きちんと管理されているか愛のある方へ譲渡されていることを祈る。

2日目に続きます。そのうち?!書きます。

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