コーヒーを語る④　ゲイシャ

この週末、静岡パルシェの屋上で「静岡コーヒーフェスティバル2019」が開かれました。美味しいコーヒーと聞けばこの私が黙っていられず、朝からご飯を抜いて駆けつけたので胃と喉がカラカラです。

ご近所では飲めない遠方のバリスタの味を、と探して会場に飛び込むと、なんと、会場の中央に美しい和装の女性がコーヒーを淹れているではありませんか。黒い汁が飛んだらお綺麗な帯が台無しですぞ！とか、この暑い中汗一滴垂らしていないとは自律神経どうなっているの？とか、お茶じゃ無くてコーヒー？！とか、色々と興味がそそられ一杯いただきました。なるほど、和装というだけでなく手元の所作がとても美しい。茶筒の粉をペーパーへ移すところからポットの持ち方傾け方、対の手の置き方まで全てが「画になる」。見ているだけでこちらの心が華やぎます。暑さを忘れて魅入ってしまいました。

セキネユカ氏は元舞妓さんでコーヒーバリスタに転職し、日本の伝統文化の継承をコンセプトに全国に出張してコーヒーを淹れているのだとか。（ネット調べ）お美しいわけですよ。コーヒーの味も華やかな香りがメインですが少し重厚さもある見事なブレンド。静岡も彼女のようなバリスタを呼ぶとは粋な計らいをしてくれたものです。とても良い時間と味を堪能できました。和装って、「良い」ですよねぇ。年を取ったせいか今日は特にそう思いました。縮小写真では美しさが伝わらないので、大判写真でブログに掲載させていただきます。クリニックの女性スタッフからの猛反発は必至ですが、それでも私のハートは止められない。（断言）

他のコーヒー店舗も巡り、コーヒー豆をいくつか購入しました。山口県下関市から出店の「Craftman Coffee Roasters」さんの「ゲイシャ」が破格の安さで売られていたので、つい購入してしまいました。本来私は苦み派なので「ゲイシャ」は敵「酸味派」の総大将格であるはずなのですけれども、先ほど和装のお姉様の所作を見たばかりですし、これも縁ですからね。しばしの休戦です、と自分を納得させました。

和装のお姉様とコーヒー「ゲイシャ」種は別の店なので関連がないのですが、実は「ゲイシャ」種は日本の「芸者」さんとも全く関係ありません。「ゲイシャ」は発見されたエチオピアの村名に由来するもので、もともとは実が小さく疫病に強いだけの劣等種で21世紀を迎えるまでは世界のバイヤーに見向きもされませんでした。ところが2004年、パナマの農園で栽培されたゲイシャ種が国際品評会で絶賛されると、シングルオリジンのスペシャルティコーヒーのブームに乗って瞬く間に世界でもてはやされるようになりました。柑橘系に爽やかなジャスミンのような香りも併せ持ち、何より入手困難な希少価値を各国の上流階級がこぞって買い求めたために値段が高騰しました。今日の日本で飲もうと思えばそれは1杯数千円になろうかと思います。確かに、美味しい。まろやかな酸味と清涼感、後味に残るまったりとした甘みまで、関連は無いのだけれども「華やかで美しい女性を想起させる」のがこのゲイシャの特長だと私は思います。

……私には華やかすぎるのです。まだこの高級豆を心の底から楽しめない。私には、仕事を終えた後に労働者が飲むような苦く重厚なコーヒーが合っています。華やかで軽やかな、午後のお茶会みたいな世界は多分似合わないでしょう。いつかそちらに入会できる日がくるのかもしれませんが。

かつて沼津に勤務していた頃に、喫茶「花野子」の「ゲイシャ原種3種パック」を購入したのが私のゲイシャ初体験でした。本物のゲイシャさまとは京都のお座敷で一度だけご一緒した事があります。どちらも、鼻腔をくすぐられるような素晴らしい香りに感動しました。2度目の感動を求めてゲイシャ（コーヒーの方ですよ！）を他の店でも試しましたが、どうにもライトロースト寄りで酸味が過剰に強調されており、初めての感動が薄らいでいくようで、いつからか私はゲイシャを避けるようになっていました。今回のコーヒーフェスティバルで手に入れた体験と豆が再びその感動を私に与えてくれるといいなぁ。明日以降にクリニックの裏で試してみようと思います。

内気でシャイな私ですが、今回は緊急の告知はありません。先日お伝えしたとおり、10月5日は臨時休診です。あとは、トップページのフロアマップを更新しましたので分り辛ければ教えてください。

9/19追記　告知がありません　なんて、幻でした。9/21と9/28，どちらも土曜の予約が埋まってきております。9/21は初診の方は予約が受けられず、9/28の初診予約もあと1人のみとなっております。9/20をはじめ平日の日中（ただし夕方は除きます）であれば現時点では初診の予約が可能です。ホームページの診療カレンダーを随時更新しますので初診を希望される方は確認してみてください。