あなたはきちんと睡眠がとれていますか

先日ある企業の安全衛生委員会で「残業時間と睡眠の関係」について健康講話をしました。


1日8時間/週に5日という通常勤務の場合、往復の通勤時間に2時間と昼休憩を含めると一日に使える自分の時間は約13時間、一日の半分程度であることがグラフでわかると思います。そのうち睡眠時間を十分とると8時間を使いますので、食事や入浴その他を含めた起きている自由な時間は4~5時間ということになります。食事をゆっくり食べましょう、お風呂はゆっくり入りましょう、と考えると余暇の時間は何時間?何分?残るでしょうか。
数時間以上の残業を行った場合、これら余暇の時間がまず削られます。次には必要最低限の生活時間は削ることが出来ないので睡眠時間が削られることになります。こうした「強制的な睡眠時間の低下」は身体に甚大な悪影響を及ぼします。精神の疾患だけでなく脳・心疾患のリスクが飛躍的に高まります。皆様は会社で残業時間の管理を行っていると思われますが、月80時間のいわゆる「過労死ライン」の場合は睡眠時間が6時間程度まで「減少させられている」のがご理解いただけるでしょうか。
また、ある研究報告によれば健康な集団の睡眠を8時間と6時間の群に分け数日観察したところ、課題への反応速度が睡眠6時間の人は睡眠8時間の人の半分にまで低下していたとも言われています。
睡眠時間を削って行う労働は能率の低下を招き、結果としてさらに残業時間を延ばす「負のスパイラル」を生みます。健康な脳と体を保つためにも残業時間を最低限に、適切な時間管理にご留意ください。

 

以下、つまらない愚痴を吐くことを許してください。
つい先日、厚生労働省の「働き方改革」という名のもと、医師の労働時間についての時間外労働上限の緩和が発表されました。医師不足の地方(まさに静岡だと思うのですが)の場合、年2000時間/月160時間まで時間外労働を認める、と国が言ったというのです。(上のグラフに月160時間という値がありますか?)思い返せばこの年末も3日間72時間連続で病院に宿泊をしました。そして今日も48時間連続の宿泊中です。月曜の朝には帰れますが本来であれば月曜の日勤があるので56時間連続の宿泊です。こうして病院に宿泊する形態は我々医師に染み付いた「当たり前」のことで「勤務」ではありません。これを支えるのは「生命への自主的な奉仕精神」であって「医師としての誇りである」。……医師の免許を戴いて以降そう思ってこの理不尽を飲み込んできました。国や病院から「勤務である」と強制されることではありません。体や心を壊した同僚や後輩をたくさん見てきました。現場で生き残っているのは強靭な精鋭の方々だけです。企業が社員を大切にするように、国も勤務医の気持ちを大切にして欲しい。これから育つ若い医師の先生方が不憫でなりません。

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